ドライブレコーダー公開
蛇行運転をするトラック。事故の原因は居眠り運転!?
なくならない長時間労働、過労運転
長時間労働は、深刻な社会問題になっています。政府も働き方改革関連法を成立させて時間外労働に上限規制を設けるなど様々な法整備も行っています。
しかし直接的な対処が施されるには、大手の企業などに犠牲者が出て、マスコミに取り上げられてからやっと行政が動き出すといったほどで、とくに運送業の中小企業などでは労働基準法などあってないようなものです。
飲酒運転については、毎日アルコールチェックなどが行われ厳重に管理されていますが、過労運転に限っては何もチェックなど行われていないどころか、何とか法律の隙間をくぐり抜け隠すことに必死になっている運送会社がたいへん多いようです。
そもそも一般的に過労運転の基準というのを明確に把握している方はあまりいませんよね?
厚生労働省神奈川労働局の発表した資料によると下記のようになっていました。
過労運転の定義
備考 | ||
拘束時間 1ヶ月 | 293 時間 | ※拘束時間とは運転時間、手持ち時間、休憩時間を含む |
最大拘束時間 1日 | 原則 13 時間以内 | 最大 16 時間以内(15 時間超えは1週2回まで) |
1日の休息期間 | 継続8時間以上 | |
1日の運転時間 | 2日平均で9時間以内 | |
1週間の運転時間 | 2週間ごとの平均で 44 時間以内 | |
連続運転時間 | 運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に30分以上の休憩等を確保することにより、運転を中断しなければならない。 | 1回につき 10 分以上、かつ、合計 30 分以上とすることも可。 |
【参照】厚生労働省神奈川労働局 貨物自動車運送事業における過労運転・過重労働防止【監督課】資料
雇用者は従業員を1日13時間も働かすことができるなら十分に感じられますよね?
しかし、実際は配送が終了し事務所に戻り次第タイムカードを切らせ退出時刻としてしまい、その後の事務処理は勤務時間と見なさない。請負契約、業務委託契約といった形態で従事されているドライバーの方などは、労働法も適応しない(※実際にはそんなことはありません。実質的な「使用従属性」の存否をもって判断されるようです。)賃金も配送した物量で決まってしまうというケースが多いので、生活のために仕方なく長時間労働、過労運転になってしまうというケースが大変多く見受けられます。
そして、私たちの息子は過労運転が原因と思われるトラック事故により命を奪われた
平成29年10月1日午前6時25分ごろ、横浜市鶴見区の首都高速湾岸線鶴見つばさ橋近くで、トラックが路側帯に止まっていた乗用車に衝突するなど計3台が絡む事故の犠牲者となり私たちの息子は死にました。
参照 : 事故当時の毎日新聞の記事
この事故の加害者運転手側家族の証言でも、日々の睡眠時間について「特に睡眠が足りないとは思いません。」ということでしたが、普段は午後10時頃に寝て、午前1時30頃に起きるということです。(※また、事故当日は普段より睡眠時間が短かったようです。)
たった3時間半です。毎日、重たい荷物の積み下ろしなどもしているのでしょうし、その上、神経を張りめぐらし大きなトラックを運転します。そのような過酷な労働を毎日3時間半の睡眠で十分だと、常識的に考えて断言できますか?
そして、事故直後の裁判では、居眠り運転を認めていた加害者(トラックのドライバー)も、途中から居眠り運転をしたという証言を拒否しだしました。
加害者ドライバーの過労運転という事実が認められ、その原因が会社側の押し付けた長時間労働だったという事になってしまえば、会社は営業停止となってしまう可能性が高いです。
彼は一緒に働いていた仲間達に迷惑がかかってしまうことを恐れたのか、会社側に何か言われたのか、突然に今までの証言を覆したのです。
⇨「新木商事死亡事故、加害者達の証言」詳細ページへ
過労運転をしてまで働く必要性とは?
たしかに、荷物を運んでくれるトラックがいなければ私たちは生活することができません。
しかし、毎日少ない睡眠時間、残業代すらまともに支払われないような過酷な労働環境が多い中、なぜ、そこまでして彼らは働かなければいけないのでしょうか?
日本の物流を支えるため?
会社の経営者や株主の生活を今まで通り保持するため?
一度、死亡事故を起こしてしまえば被害者とその遺族、加害者のドライバーも、今まで通りの暮らしは二度と取り戻すことはできません。
死ぬまで永遠に辛い悲しみを背負って生きていくことになります。
会社の経営者や株主の生活を守るため、無理な労働環境を維持する必要性はどこにあるのでしょうか?
そんなにリスクをとって彼らは一体何を手に入れる事が出来きたのでしょうか?
もう一度、よく考えてみてください。
もし、厳しい労働環境だけど生活のため仕方なく過労運転をしてでも働かれているドライバーの方、労働基準法に反した環境に耐えられなく会社を辞めたけど、以前の仲間達にも迷惑をかけたくないという理由で、何も訴えでない方がいましたら、今からでも遅くはありません、労働基準監督署に相談しに言ってください。
そのような、社会の仕組み自体が間違っているのです。
実際にそのような過酷な環境で働いていた犠牲者、生活のため無理な過労運転をする事になってしまい他人の命を奪ってしまった犠牲者、過労運転事故により大切な人を失ってしまった犠牲者達が声をあげなければ、何も変わりません。
そして、新たな犠牲者達が現れてしまいます。
運送会社の過労運転が無くなるまで
私たちは、21歳の若さでこの世を去ることになってしまい、言いたい事があってももう何も言えない息子の代弁者となり、長時間労働、過労運転といった間違った社会の仕組みが無くなるまで訴え続けます。
加害者のドライバーと加害者の勤務先の運送会社が、このような間違った社会の仕組み(長時間労働による過労運転)を無くなるように行動を起こし、自分達の保身を捨て正しい行動を起こさない限り、私達は彼らを絶対に許すことはないでしょう。