過労運転による行政処分基準改正、それだけでは死亡事故は減らない

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2018年7月 過労運転による行政処分が強化されました。

2018年3月30日、国土交通省はトラック、バス、タクシーの運転者の過労防止関連違反に対する行政処分を強化し改正すると通達し、この通達は2018年7月1日から施行されました。

具体的には、「処分量定を2倍~4倍に引き上げ」、「車両の使用停止(行政処分)の割合の引き上げ」ということです。

これは、トラック運送業の人手不足、労働環境を改善するために行われた措置のようです。

平成29年6月、国土交通省自動車局が作成した資料(自動車運転業務の現状)によると、トラック運送業の人手不足の状況と労働環境は下記のようになっています。

○労働時間
・ 平均労働時間は、全職業平均と比較して約1~2割長い。
・ 平均所定外労働時間は、全職業平均と比較して約2~3倍の長さ。
・ 週間就業時間が60時間を超える者(月80時間の時間外労働時間に
相当)の割合は、約4割であり、全職業平均の約3倍。

○賃金
・ 年間賃金は、労働時間が長いにも関わらず、全職業平均と比較して
約1~3割低い。

○運転者不足
・ 有効求人倍率は全職業平均の約2倍。人手不足が年々深刻化。
・ 女性比率は、全職業平均の1割未満と低い。
・ 平均年齢は、全職業平均と比較して約3~17歳高い。

過労運転による行政処分基準改正、何が変わったの?

主な変更点は、以下の2点です。

    • ①過労防止関連違反等に係る車両停止等の処分量定を引き上げ
    • ②営業所での監査結果に基づき行われる車両の使用停止(行政処分)について、トラックに関しては、営業所で保有する車両数全体の最大5割へ引き上げ

過労防止関連違反等ってどんな違反?処分量定って何?

主な変更点①の過労防止関連違反とは今回の改正告知の内容では主に下記の3点が挙げられています。

      • 乗務時間告示の順守違反
      • 健康診断の未受診
      • 社会保険未加入事業者

そして、処分量定とは過労防止関連違反が発覚した場合に、行政処分により使用を停止させる車両数の量のことです。

処分量定は○○日車という単位で罰則を与えられます。

例えば、150日車の処分量定があった時には営業所で保有する車両数全体の割合に応じて下記のように処分が行われます。

      • 5両の場合は、車両停止 2両✕75日
      • 10両の場合は、車両停止 2両✕75日
      • 100両の場合は、車両停止 7両✕18日, 1両✕24日

そして、今回の過労運転による行政処分基準改正の主な変更点②営業所での監査結果に基づき行われる車両の使用停止、車両数全体の引き上げにより、下記のように車両停止の割合が引き上げになったようです。

      • 5両の場合は、車両停止 2両 (✕75日)
      • 10両の場合は、車両停止 5両 (✕30日)
      • 100両の場合は、車両停止 15両 (✕10日)

運送会社への行政処分は飲食店などとは違い、全体の何割かを使用停止(営業停止)にするといった方法のようですね。

↓詳しくは下記をご覧ください。
国土交通省の資料

過労運転による行政処分を厳しくしただけで、労働環境は良くなるのか?

国土交通省の通達では、

その他、トラックの法令遵守の徹底を図るための措置として、巡回指導を強化する。

  • ①総合評価が著しく悪い事業者
  • ②新規参入後の総合評価が継続して悪い事業者
  • ③健康診断受診や社会保険加入などの基本項目が不適切である事業者

上記の項目に対して重点的に監査を実施する。2018年10月1日から開始する予定。

ということですが、これだけで本当に変わるのでしょうか?
健康診断受診や社会保険加入は以前よりは徹底して調べることは可能かもしれません。
しかし、「総合評価」ってどこで評価してるのでしょうか?
全国の自動車運送事業者で勤務する労働者個々人に会社を通さずにアンケートでも取れば総合評価がわかるかもしれません。

しかし、結局のところ、交通違反・事故の回数が増えたり、労働者が労働基準法違反を訴え出るなどし、犠牲者が現れるまでは、その自動車運送事業者の実態はわからず総合評価は良いままでしょう。

過労運転をさせるような会社で働いてはいけない!

2017年10月1日、横浜の首都高湾岸線で私の息子は新木商事という運送会社のトラックに追突事故を起こされ21歳という若さでこの世を去ることになりました。

【関連記事】

新木商事死亡事故

トラックの運転手が追突事故を起こしてしまった原因は「居眠り運転」が原因だろうということなので、
もう少し早く「過労運転による行政処分の強化」が施行されていたならば、息子は死なずに済んだのではないかと度々考えてしまいます。

もし、会社の労働条件が厳しく過労運転をしているトラックドライバーの方や、交通事故を起こしてしまったトラックドライバーの方がこの記事を見られていましたら、
決して、「職を失いたくないから我慢しなければ、、」とか、交通事故を起こしてしまい「自分のせいで会社に迷惑をかけてしまった」などと考えないでください。

あなたは、会社のために犠牲になってしまった可能性があります。

日本の物流や家族を守るためと一生懸命働いてきたのに、全ての罪を一人で受け止めることはありません。

今一度、会社の労働条件を確認し、法令が遵守されていなかったならば、証拠を取り揃え労働基準監督署へ相談しにいってみてください。

労働基準監督署やお役所は証拠や訴え出る方がいなければ何もできません。

過労運転をしてしまっているトラックドライバーの方達が「会社に迷惑をかけるのは嫌だ、、」などと泣き寝入りをしてしまっては、事故の被害者と事故を起こしてしまった運転手のみが犠牲となり、会社の労働環境などは変わりません。

そして、次の死者が現れるまで、その厳しい労働環境は次の世代へと受け継がれてしまいます。

運送業は国民の豊かな生活を維持するには絶対に必要な仕事です。
だから、もっと労働環境は良くならなければいけないはずです。

また、これから運送業界へ就職を考えられている方々へ、
現在日本は運送業界に限らず慢性的な人手不足に陥っています。
決して自分の労働力を安売りしないでください。

会社の労働条件をよく確認してから雇用の契約を結びましょう。
もし、良い会社がないなら他の業種も視野に入れてみてください。

あなたと、あなたの家族の未来を守るためにも。

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